2014.08.19

日帰り登山のプランニングについて

富士山日記第14号 執筆者 環境省 富士五湖自然保護官境事務所 アクティブレンジャー 小西

最近気になる山頂に夕方いる登山者の皆さん

富士山の登山シーズンも早いもので残り1ヵ月となりました。

富士登山を計画されている方もまだまだ数多くいらっしゃるかと思いますが、皆さん登山前にどのように計画をされているでしょうか?

富士五湖自然保護官事務所と沼津自然保護官事務所のアクティブレンジャーは2週間に1度は山頂に泊りがけのパトロールに出かけます。

その際、最近気になっていることがあります。それは、、、、、

夕方なのに山頂を目指している日帰り登山者が多い!

ということです。

八合五勺付近でも、夕方15時~16時を過ぎて山頂を目指している方を見かけます。そういう方を見かけた際には、お声掛けをして、まず日帰りかどうかを確認し、下山時に日没になってしまう可能性があることを伝えます。
そうすると、多くの皆さんから

「ヘッドライトを持っています」

と言うお答えが返ってきます。ヘッドライトを持っているので安心、と思っている方が多いように見受けられます。
 
山頂で休憩している登山者(7月22日16:20)
下山の平均は3時間30分(吉田ルート)です。この時間にまだ山頂にいると、下山中に日没になってしまいます・・・
山頂を目指す登山者
(8月11日16:20 吉田ルート九合目付近)
赤丸が登山者です。20人以上いました。まだ山頂まで40分くらいかかるので山頂到着は17時を過ぎてしまいます。

夕方~夜間に歩くリスク

富士山では御来光を見るために夜間に登ることは一般的に行われていますが、夕方~夜間に歩くことは日中に比べリスクが大きくなります。

どんなリスクが考えられるでしょうか?
 

  • 道迷い   → 暗いため分岐点などを見過ごしてしまう可能性があります
  • 滑落    → 暗いため道を踏み外して滑落してしまう危険性があります
  • 雷     → 山の天気は午後崩れやすく、雷の発生率も高くなります
  • 落石    → 落石が起きてもどこで起きたのかが見えず非常に危険です
  • 救助の遅れ → 怪我をしても周囲に登山者が少なく救助してもらえない可能性があります
  • 気温の低下 → 日が暮れると気温も急激に低下します。
  • 精神的不安 → 暗くなってくると精神的にも不安になります。不安が焦り、判断ミスにつながります。 

     

こうやって並べてみると、暗い中での登山は思っている以上に危険を潜んでいますよね。

私が登山をする際は、自ら避けられるリスクは極力、計画段階で避けるように心がけています。特に”日が暮れる前に下山する”ことは強く念頭に置いています。

御来光を目指して登る登山者(7月30日 吉田ルート)
これに比べ夜間の下山道は人が少なくずっと暗いです。吉田ルートの下山道には8合目より下に山小屋もありません。

プランニングはとても大切です!

夜間に出発し夜通し歩いて山頂での御来光を目指すいわゆる「弾丸登山」は危険性の周知等で減少傾向にあります。

安全面、体力面等を考慮し1泊2日の余裕を持った行程をお勧めしていますが、それでも、体力に自信がある、宿の予約が取れなかった、休みが1日しかない、節約したい、様々な理由で日中の日帰り登山を選ばれる方がいらっしゃると思います。

日帰り登山をされる場合は、色々な点を考慮し慎重にプランニングをお願いします。
 

 <登山時間>余裕を持った計画に!
日帰りの場合標準でも8~10時間の登山になります。地図等に載っているのはあくまで標準時間です。ご自分の体力や登山経験をよく考えて余裕をもった計画にしましょう。富士山の場合、高所のため休憩も頻繁にとるようになりますので、休憩時間も多めに考えておくといいと思います。
 
 <出発時間>早出が基本!
登山時間を計算したら、日没までに戻れるよう逆算して出発時間を決めましょう!途中、疲労やケガでスローダウンしてしまうかもしれません。余裕があるに越したことはありません。予想より早く下山できたら、その分下界で、温泉・観光・買い物、色々楽しめますね! 
 

山小屋は直前に空きが出る場合も!

1泊2日の登山を計画していたけれど宿の予約が取れずに仕方なく日帰り登山に・・・・という方も多いかと思いますが、山小屋は直前になってツアー分のキャンセルが出て空室が出てくる場合もあります。

出発が近くなって問い合わせをしてみると、意外に予約ができるかもしれません!

また
●「8合目宿泊を考えていたのを7合目にしてみる」など宿泊場所を変更する
●登山ルートを変更してみる

というのも空いている山小屋を見つけるひとつの方法だと思います。

ご自分の体力・経験にあった無理のないプランニングをして、より楽しい登山にしましょう!