2017.08.17

【山の日】富士山麓自然観察会

富士山日記第61号(執筆者 環境省 沼津自然保護官事務所 三上)

山の日が制定されてから今年で2回目の山の日を迎えました。 各地で山の日にちなんだ様々なイベントが開催されるなか、富士山麓においても自然観察会を行いました。 富士山北麓では「西湖周辺」、南麓では「西臼塚遊歩道」で開催しました。 今回は「西臼塚遊歩道」での自然観察会の様子をご紹介します。

富士山南麓自然観察会 -西臼塚遊歩道-

「西臼塚遊歩道」は標高約1250mの二合目付近にあります。
当日は雨が降ったりやんだり、霧が立ち込める中での開催となりました。
広く歩きやすい歩道を20分ほど歩くと、西臼塚山頂に到着しました。
西臼塚は富士山の側火山の一つです。火口部に降りて、足元を見てみるとスコリア呼ばれる火山から噴出した小さな石が転がっており、昔噴火した様子がみてとれました。
また富士山は古富士と呼ばれる古い火山の上に新富士という新しい火山が重なった構造をしていることも解説されました。西臼塚火口には雨水が溜まっていましたが、この雨水は、新富士を浸透していき、古富士の上を伝って約10年後に湧き水として私たちのもとに届くとの説明がありました。

西臼塚火口

途中、自然を利用した遊びも取り入れられました。
まず、たくさんある木々の中から自分のお気に入りの木を見つけ、目をつぶっている相手にその木を触ってもらいます。次に相手にはその木から少し遠くに離れてもらい、目を開けてもらった後、さきほどの手の感触を基に触った木がどれか当ててもらいます。
参加者は、木の表面の手触りや凸凹を手掛かりに相手のお気に入りの木を探し当てていました。

お気に入りの木を探し当てる様子

西臼塚の木々の中には根本付近の樹皮が剥がれているものがあり、シカの仕業であることも解説されました。
シカは餌となる木の葉や果実の少ない季節には、樹皮を食べてしまうことがあります。樹皮が剥がされてしまうと、栄養分が十分に行き渡らずに立ち枯れしてしまうのです。
被害が進まないようにシカの捕獲が行われているなど、森林の抱えている問題なども勉強する観察会となりました。  

シカによる被害を学ぶ様子

またほかの木々の上部を見ると、穴が開いていましたが、これはキツツキの仲間であるコゲラが開けた穴のようです。
コゲラによってこのような穴が開く理由としては、餌となる虫をとるため・巣を作るため・求愛のための3つがあります。
特に求愛については、大きい音を出すと雌にとっては魅力的に見えるようで、クチバシで大きい音を出そうとしてつついた結果、穴が開くということです。 

コゲラの開けた穴

他には倒木が土に変化している様子を見て森林の循環を学んだり、サンショウの葉の匂いを嗅いだりするなど、五感を使って大いに自然を満喫する機会となりました。 

サンショウの葉の匂いを確かめる様子

五合目以上の登山道に比べて西臼塚遊歩道は静かな雰囲気を楽しむことができます。
起伏も緩やかで、ゆっくりと楽しめるコースです。家族連れの参加者も無理なく自然を体験し、学ぶことができました。
山の自然の中に身を置くと、自然のスケールの大きさや多様さ、その恩恵を受けていることを学ぶことができます。
今回のような山に親しみを持ち、山の恩恵に感謝できる機会は大切にしていきたいと思いました。