2019.08.22

富士山の植物(富士宮ルート編)

富士山日記第82号 執筆者 環境省 沼津管理官事務所 山田優子

毎日暑い日が続いていますが8月も終わりに近づいています。
早いもので富士山も後20日で閉山です。
山では植物も夏から秋へと徐々に変化しています。日もだんだん短くなっていますので、これから富士登山を計画されている方は、日の入りの時間を確認して行程を立てられる事をお勧めします。

今回は、富士宮ルートの植物を紹介したいと思います。前回の須走ルートとは違い登山道入口から視界が開けていて同じ富士山でもイメージがかなり違います。岩場やスコリアに植物が点々と群生していますので、疲れて下を向きながら歩いている時、ふと岩場から顔をのぞかせている高山植物に元気をもらえるかもしれません。

~富士宮ルート~

富士宮ルートは全ての登山道の中で一番高い標高2,380mから登りはじめます。
登山道入口で標高2,000mを越えていますので、
準備をしながら30分以上の高所順応をお勧めします。
登山道は岩場が多く、登りはじめは緩やかに登っていきますが、段々と急になっていきます。登山道と下山道が同じなので、すれ違いに気をつけて下さい。また、下山で足が疲れてくると不安定な岩場から足を滑らせたり、つまづきやすいので最後まで注意して下山して下さい。

イワツメクサ

【イワツメクサ】
高山の砂れき地や岩場の隙間に群生し、葉が細く曲がり尖っていて鳥の爪に似ていることから名前が付けられました。花は1㎝くらいの小さな白い花が咲きます。深く切り込まれた花びらが10枚に見えますが実は5枚です。開花時期は7月~9月上旬頃。
富士宮ルートの五合目から七合目付近でたくさん見ることが出来ます。岩の間から小さな白い花が揺れているので見つけやすいと思います。開花時期が長いので、開山期間中は登山道の至る所で見られると思いますので探してみて下さい。

オンタデ

【オンタデ】
標高1,400m~3,300mと広範囲の砂れき地に生息する高山植物で富士山に最も多く見られます。花は黄白色の小さな花の集まりです。開花時期は6月~9月。富士宮ルート五合目から八合目で見ることが出来きます。
遠くから見ると花に見えませんが、とても可愛らしい小さな花です。オンタデは高所から雪崩などで低標高に運ばれたと言われていて、今では登山道入口より下でも見ることが出来ます。大きく目立つので、登山中に何度も見かけると思いますので覚えて行って下さい。

コケモモ

【コケモモ】
高山の日当たりのいい岩場や砂れき地に生息する樹木で、花は白や薄いピンク色の鐘形で下向きに咲きます。開花時期は6月~8月。
花が終わると1㎝程の赤い果実をつけ、食べると酸味がありジャムなどに使われます。富士宮ルートの五合目から六合目の間で見ることが出来ます。夏から秋、花から実へと四季のうつろいを感じて下さい。

ミヤマオトコヨモギ

【ミヤマオトコヨモギ】
亜高山帯から高山帯の岩場や砂れき地に生息します。茎は斜めに伸びて、花は茎に対して少し大きめで下向きに咲きます。開花時期は7月~9月。
富士宮ルートの五合目から九合目まで見られます。登山道のたくさんの場所で見ることが出来ます。重たそうに花をぶら下げているので、観察してみて下さい。

ムラサキモメンヅル

【ムラサキモメンヅル】
亜高山帯の標高2,000~2,500m付近に地を這うように群生しています。薄紫色の花が咲きます。花が終わると上向きに袋状の実を付けます。開花時期は7月~8月。
富士宮ルート五合目から六合目で見ることが出来ます。春によく見かけるレンゲソウと似ているので、富士山で紫色のお花畑を楽しんで下さい。

ヤマホタルブクロ

【ヤマホタルブクロ】
山地から亜高山帯の砂れき地に群生する多年草です。大きな鐘形の白色やピンク色の花が下向きに咲きます。ガクが反り返っていないのが「ヤマホタルブクロ」で、ガクが反り返っているのが「ホタルブクロ」です。開花時期は7月~9月。
富士宮ルートの五合目から六合目付近で見ることが出来ます。名前の通り、昔この袋のような花の中に蛍を入れて遊んだと言われています。今が見頃でキレイに咲いています。

須走ルート、富士宮ルートと富士山の植物について書いてきましたが、どちらも下向きに咲く花が多いですね。この他にもたくさんの植物が富士山には群生しています。
富士登山は自然を楽しむ事より、御来光や登頂することを目的とされている方が多いと思いますが、足下には高山植物がたくさんあります。ぜひ高山植物を楽しむ余裕を持った行程で安全登山をお願いいたします。