夏到来! 安全で楽しい富士登山を!! (3)マナー&ルール編
富士山日記第119号(執筆者 環境省 富士五湖管理官事務所 アクティブレンジャー 半田尚人)
(3) マナー・ルール編
1. 富士山5合目以上は「特別保護地区」です
富士山に足を踏み入れる前にぜひ認識して欲しいことがあります。富士箱根伊豆国立公園に属する富士山は、5合目以上(※1)と青木ヶ原樹海が自然公園法の「特別保護地区」に定められ、ここでは動植物の採取・捕獲はもちろんのこと、落ちている熔岩などの岩石や枝なども環境大臣の許可がないと持ち出すことは出来ません。
よく「生きている動植物を取るわけじゃない。落ちている石ころ一つ取って何が悪い」と言う人がいますが、富士山は開山期間中の吉田ルート8合目以上への登山者だけでも、年間15万人もの人が訪れます。(コロナ禍前 2019年実績) 5合目までの観光者も含めたらもっと多いでしょう。想像してみて下さい。これだけの人が「自分一人くらい、石ころ一つくらい」とみんなが好き勝手に石や枝を持ち去ったら…。それが何年もずっと続いたら…。たった一人にとっては「これくらい」のことでも大勢の人が同じことをしたら、あっという間に富士山の環境は変えられてしまいます。だからルールがあるのです。ぜひ富士山の自然環境を守る意識を持って臨んで下さい。
※1… 須走ルートについては標高2,400~2,500m付近以上、御殿場ルートについては新六合目以上
2. 山にゴミ箱はありません
多くの観光客が五合目に訪れ、国内外多くの人が登る富士山。遊園地やレジャー施設と同じように思うかも知れませんが、自然のただ中にある山岳の一つであることに変わりありません。
麓でも高速道路のサービスエリアやコンビニ、公園等にあるゴミ箱に家庭ゴミなどが捨てられることが社会問題になっています。”捨てる人”からすれば、自分の目の前からゴミが消えれば、それでおしまい、スッキリするかも知れませんが、「ゴミ箱がある」ということは、その裏にゴミ箱の中身を回収し処分する人たちがいる事を想像して欲しいです。そして富士山には、自然のただ中にある多くの山と同じように、そのようなゴミ箱はありません。山にゴミ箱が無く、ゴミは持ち帰るのが山の常識です。
ぜひ、「自然の中にお邪魔させていただく」という謙虚な気持ちを持って、自分の出したゴミは責任を持ってお家まで持ち帰りましょう。
3. 富士山入山料(通行料)にご理解下さい。
富士山の登山道は山頂に繋がる4つのルートとも五合目にて入山料(通行料)が必要です。入山料(通行料)はいずれも4千円(2026年現在)です。入山料(通行料)導入以前は「富士山保全協力金」という任意の協力金として、集めたお金を「環境保全」や「登山者の安全」「登山者のサポート」などに使われて来ましたが、令和6年度をもって「富士山保全協力金」は廃止され、これまで協力金で実施していた事業は、引き続き入山料(通行料)を充当し実施していきます。ご理解をお願い致します。
入山料(通行料) の使いみちの例
- 「富士山の環境保全」… 自然環境の保護、バイオトイレの修繕、
- 「登山者の安全」… 噴火に備えたヘルメットやゴーグル、安全誘導、五合目総合管理センターや富士山安全指導センター
- 「登山者のサポート」… 救護所、外国人サポート(通訳等)、富士山に関する情報提供
その他、登山道・下山道の巡視、下山道の維持管理、多言語音声案内機の設置、登山者動向調査、国内外の登山者に安全登山や環境保全の理解を促すビデオなど。
山小屋等のトイレの維持管理には協力金は使われず、トイレチップで賄われます。
トイレを利用するときには、チップのご協力をお願いします。
※本章は、富士山日記 第119号投稿当時は「保全協力金」に関する内容でしたが、現在(2026年)の内容に書き換えました。
4. 山小屋での注意点
まず、冒頭1.に記したとおり、富士山5合目以上は「特別保護地区」であり、自然公園法で厳格に保護されています。そのため幕営禁止(テント設営禁止)となっています。御来光を見るために9合目や山頂でテントを張る登山者が時折いますが、違法行為です。きちんと山小屋に宿泊して下さい。
沢の無い富士山の山小屋では、水は非常に貴重です。また同様に “スペース”も非常に貴重です。コロナ禍を経て各山小屋が改修され以前より格段に快適にはなりましたが、基本、寝袋分のスペースしか自分のスペースはありません。山小屋に着いたらまず自分の荷物を整理して、夜中にガサゴソしないで済むようにしましょう。
夜中はなかなか眠れないことが多いです。特に富士山が初めての人はドキドキしているし、いびきがうるさく、また位置によっては小屋の電球が夜中も点灯して眩しかったり、慣れた布団の環境とはほど遠いので睡眠不足となり、それが原因で翌日高山病になってしまうことがよくあります。不安な人は耳栓やアイマスクを用意すると良いかも知れません。
富士山では御来光を山頂で見たいという人が圧倒的に多いので、山小屋の標高にもよりますが、大体深夜の0~2時頃にはみんな起きだして準備をし始めます。でも、「みんな起きているのだから、多少うるさくても問題無いだろう」と大きな音を立てるのはマナー違反。特に耳障りなのが、レジ袋のシャカシャカ音。富士山以外の山小屋でもそうですが、注意をしましょう。山小屋でゆっくり御来光を見て、それから登頂を目指す人もいます。先述のとおり睡眠不足は高山病の元。ご注意下さい。
5. トイレチップの話
富士山の5合目以上にあるトイレは、山小屋も、山頂や登山道の公衆トイレも全て「環境配慮型」です。牡蠣殻やおがくずなどを用いた細菌分解型や燃焼型など様々なタイプがありますが、どれも維持管理費がとても掛かるため有料です。(1回につき200~300円(山小屋宿泊者の場合はその山小屋のルールに従って下さい)) 小銭を準備しておきましょう。(※2)
※2 … 2023年夏より富士山頂公衆トイレ(富士宮側) では、トイレチップにPayPayでの支払いが可能になりました。ぜひご利用下さい。