2024.03.15

富士山眺めながら体力づくり(黒岳編)

富士山日記第121号(執筆者 環境省 富士五湖管理官事務所 アクティブレンジャー 半田尚人)

こんにちは。富士五湖管理官事務所の半田です。
さて、皆さんの中には今年 富士山にチャレンジしようと思っている方はいますか? 登山経験が無く人生初の富士登山を友達と挑む若者のあなた。逆に若い時は随分とあちこちの山に登ったけれど、最近はさっぱり登ってなく、久し振りに昔の山友と富士山に登ろうと言うシニアのあなた。でもちょっと待って! 富士登山に向けての体力づくりはしていますか?
富士登山に向けた体力づくりは、アスリートのような筋力を付けようとする訳ではなく、肺活量を鍛え、一日山を歩き続ける持久力を養うためにするものです。「富士登山に向けてどこか山登りをしましたか?」と質問すると「人生初の登山で、この間、東京の高尾山に登りました」なんて答えが返って来ることがありますが、富士山は日本最高峰の山。ぜひ今のうちから身近な山を手始めにたくさん山登りをして、富士山を楽しく登れる持久力を身に付けましょう! また、今年は登山の規制も始まることから、今年は様子見で、富士山には登らずに見て楽しもうという方も多いかも知れません。そういう方もぜひ富士山周辺の山々を登って富士山を望む絶景を楽しみながら、カラダづくりをしていきましょう!

大石公園~新道峠~黒岳

黒岳周辺 概念図

そんな中で、富士山を眺めながら体力づくりができる山として山梨よりご紹介したいのは、御坂山塊の最高峰である黒岳(1,792m)と新道峠のツインテラスです。距離 約12km 累積標高差 約1,340m 標準コースタイム6時間10分(休憩時間含まず) と昨年紹介した三方分山よりは距離・時間が長い持久力を養える山です。特筆すべきは、新道峠のツインテラスをはじめとする展望スポットからの河口湖と富士山の眺望です。春夏秋冬、季節の山の表情を感じられる魅力的なコースです。
写真は2月に撮ったものですが、コースの魅力をご紹介しましょう。

河口湖畔 大石公園よりスタート

まずスタートは河口湖北岸にある大石公園から。ここはラベンダーやコキアなど四季折々で花壇が植え替えられ、花と湖と富士山の絶景が気軽に楽しめる、国内外の観光客に人気のスポットです。運が良いと湖面に富士山の姿を映しこむ「逆さ富士」が見られることもあります。早朝で湖面にさざ波が立っていない時間帯が狙い目です。

大石公園より富士山を望む

ここから登山に出発しますが、車で来訪の場合、一日駐車しておくことになるので、他の観光客の人たちに迷惑にならないように奥の方から詰めて駐車するよう、ご協力をお願いします。トイレを済ませ、準備体操をして出発しましょう。

神社を過ぎて林道へ

大石公園を出て正面の大石紬伝統工芸館の脇にある道を山に向かって進んで行くと20分ちょっとで公園のある神社があります。浅間日月神社(あさまじつげつじんじゃ)です。ここで登山の無事をお祈りして行きましょう。ここは裏山が迫っているので、サルなどに出逢うこともあります。
そして、しばらくそのまま進み上がって行くと別荘地があり、越えて行くと中沢林道になります。
林道では人も少ないので、シジュウカラやウソなどの野鳥に出逢う機会も多いでしょう。野鳥の囀りや雪が枝から落ちる音など自然の音に耳を傾けながら登って行くと、疲れが癒やされます。

浅間日月神社で山行の無事を祈念
中沢林道で出会ったウソ(鷽)

しばらく林道を進むと「ハイキングコース案内図」と書かれた大きな案内地図が道の右側に現れます。ここが新道峠への登山口です。「新道峠入口」の文字が木の枝で見えないこともあるので、ご注意下さい。
私が歩いた時は、2月下旬で雪がうっすらと残っていましたが、道に迷うことはありません。しかし、場所によっては道幅が狭くなっている箇所もありますので、慌てず慎重に登りましょう。この時期、今回のコースでは日陰の凍結した場所は無いので、雪を蹴り込んで進むキックステップでも十分に行けますが、何があるか分からないので、チェーンスパイクなどの滑り止めは必ず携行しましょう。

新道峠へ通じる登山道

新道峠のFUJIYAMAツインテラス

標準コースタイムで約2時間半ほどで新道峠に辿り着きます。ツインテラスのうちの1つセカンドテラスがまず見えて来て、その100m程先に大きなファーストテラスがあります。テラスからは晴れていれば河口湖と富士山の素晴らしい眺望が望めます。私が登った日は前日が雪だったので、樹木が雪を纏ってとても美しかったです。ここで絶景を堪能しながらランチを食べるのがオススメです。

セカンドテラスからの河口湖と富士山
ファーストテラスの様子

このツインテラスへは笛吹市側からの水ヶ沢林道は冬季閉鎖となり、送迎バスも冬は運行していないので、ご注意下さい。ちなみにファーストテラスにはライブカメラが設置されており、新道峠からの今の眺望を365日見ることができます。詳しくは笛吹市のサイトへ。

いざ 黒岳へ

さて、新道峠を出発して、黒岳山頂へ向かいます。ここからは御坂山塊の稜線に沿って進みます。
黒岳までの稜線上で富士山を望める開けた場所はあまりありませんが、四季折々の自然の表情が楽しめます。冬のこの時期は、木々に雪や霧氷が付き、晴れた日にはそれが白く輝いてとても綺麗です。あらためて自然の中を歩くことの気持ち良さを実感します。

雪道の稜線を黒岳めざして進む
木の枝に付いた霧氷

途中、破風山を越え、すずらん峠を越えると黒岳への登りとなります。晴れた日だと、甲府盆地の先に南アルプスの峰々も望むことができます。日本第2位の高さを誇る北岳(3,193m)、第3位の間ノ岳(3,190m)と日本の3高峰が眺められると富士登山へのモチベーションがより上がって来ます。

南アルプス 右: 北岳 左: 間ノ岳

黒岳の登りがこの山行の最後の登りとなります。ここまで登って来て、だいぶ疲れも溜まっているかと思いますが、ゆっくりでもいいので、ペースを一定に保って歩くことが山歩きとしては大切です。
そしてその自分に最適なペースで歩くと標準のコースタイムと比べてどうなのかを知っておくと、今後、富士登山に限らず山登りを計画するときに参考になるので、ぜひ確認してみて下さい。

黒岳山頂

最後の登りを登ると御坂山塊の最高峰、黒岳山頂(1,792m)です。山頂自体は木々に囲まれて展望は無いですが、5分程行くと展望地があります。

御坂山塊最高峰の黒岳山頂(1,792m)
黒岳展望台からの富士山と河口湖

ちなみに河口湖に浮かぶ島がちょうど正面に見えていますが、この島は富士五湖唯一の島で宇ノ島(富士河口湖町指定文化財)です。無人島ですが、弁財天が祀られており、毎年4月下旬には例大祭が行われます。

河口湖目指して下山

黒岳展望台でゆっくりしたら、河口湖に向けて下山しましょう。黒岳の南尾根を下って行くと途中から「広瀬」と書かれた緑色の古い標識があり、要所要所でロープが張ってあるので、それに従っていけば恐らく迷うことは無いのですが、割と斜面が急な上に路面が雪や泥だったり、濡れた落ち葉だったりするのでとても転びやすいです。登山は特に登りよりも下りに注意する必要があります。
ストックがあればストックでバランスを取り、万が一の転倒に備え手袋をし、腰を低くして慎重に下ることをお薦めします。

下りは滑って転びやすいので、特に急坂は注意
落ち葉の急坂を下ると登山口

案内に従ってずっと下って行くと、最後、落ち葉の降り積もった急坂があり、下りた先で堰堤を渡ると登山口に出ます。ここは河口湖の広瀬地区で大石公園までは湖畔まで下りて30分程歩くと戻れます。下りは滑りやすい急坂もあるので、日没前には必ず麓まで下山できるよう余裕を持って行動して下さい。

どうでしたか? ご紹介した大石公園~新道峠~黒岳の他にも富士山周辺には、富士山を眺めながら体力づくりができる素敵な山がたくさんあります。こういった山は一つ登れば十分ということはありません。ぜひ、ご自宅の近くの山も含めていっぱい山歩きをして、山に慣れたカラダづくりをして下さい。たくさん登ってカラダも山での経験値もアップすれば、その分、富士登山の際にも余裕ができ、より登山を楽しむことができますヨ。

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